「僕の人生の目標は、お金の教育を義務教育に導入することです」
この目標を掲げているのは、本メディアの運営者である、税理士の ”大河内 薫先生” です。
YouTubeやVoicyをはじめとしたSNSでお金に関する発信を続け、総フォロワーは53万人以上(2023年9月時点)。現在は、国内外の小学校から大学までさまざまな学校に出向いて、子どもたちに向けてお金の授業をしています。
今回はそんな大河内先生に、以下の内容を伺いました。
- なぜお金の教育が必要なのか?
- どうしてお金の教育に情熱を注いでいるのか?
- 目標に向けてどんな活動をしているのか?
- 日本人がお金に強くなるためにやるべきことは?
本記事を読んでいただくと、お金の教育の重要性や、大河内先生の活動内容がわかるようになっています。「お金の教育ってなんで重要なの?」「大河内先生ってどんな人?何をしてるの?」と疑問に思っている方は、ぜひご覧ください。
- お金の教育の重要性
- 大河内薫先生の活動内容
- 日本人がマネーリテラシーを上げるために、今やるべきこと
お金について学ぶ場がないのはおかしい。お金の教育の重要性
大河内先生は何万回、何十万回と言われていると思いますが、改めてお聞きします。お金の教育はなぜ必要なのでしょうか?
お金は毎日使うものなので、当然お金の上手な使い方を知っておいたほうがいいですよね。でも、日本の大人たちに十分なお金の知識があるか? といったら、そうではない。
みんな「なんとなく」お金を稼いで「なんとなく」お金を使っている状態です。なかには「自分は大丈夫」と思っている方もいるかもしれません。でも改めて考えると、学校、家庭、社会……どの場所にも「きちんとお金について学ぶ場」は存在しないんです。
僕も昔は「生活費さえ稼げれば大丈夫」と錯覚していましたが、お金について学ばなければならないと感じる出来事がたくさんありました。日本社会では「お金の話はするものではない」という文化が根付いていますが、そろそろ変えないといけません。だから、お金の教育の必要性について発信をしています。
「お金の教育が必要」と思ったきっかけは何でしょうか?
2018年に「お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが、税金で損しない方法を教えてください!」(以下、フリーランス税本)を出版したときに、税金の疑問や不安について、フリーランスの方に取材をしたんです。すると、こちらが想定していた以上に税金のことを知らないとわかりました。
僕は税理士なので「知ってて当然」だと思っていたことを、多くの人は知らない。でも、学ぶ機会がないのだから、知らなくて当たり前だと思いました。
「税金は絶対に支払うのに、なぜ教育にないんだろう?」と考えたときに、今の状況はおかしい。変えなくてはいけないと、やっと気づいたんです。そこから、今に至る想いが走り出しました。
タイトルやサムネで釣る必要はない。YouTubeの目的は「生きる力をつけてもらう」
最初は税金に関する情報を発信されていたのですか?
発信をスタートして5年ほどは、税金にこだわっていました。でも社会を見たときに、税金に限らず「お金全体」の教育が足りていないと気づいたんです。
特にコロナウイルスが出てきたあたりから、これから社会はどうなってしまうんだろう。僕にできることはないだろうか……とモヤモヤが大きくなっていきました。世界や日本を見たときに、あまりにも調子が悪い。この社会を子どもたちに渡すのはさすがに可哀想すぎる。
そんな現状から、僕がやるべきことはお金の教育を広めることだ!という使命感を抱き始めて、今の活動を始めました。
「お金の発信」という広いテーマだと、競合となる発信者がたくさんいると思います。自分より詳しい人がいるから……といった迷いはなかったのでしょうか?
迷いはありませんでした。お金の発信者の目的はほとんど「ビジネス」です。例えばYouTubeなら広告費で稼いだり、自社の売上を伸ばしたりしたい人が大半だと思うんですよ。
でも僕はビジネス目的ではなくて、お金の教育を広めて「生きる力」をつけてもらうためにチャンネルを運営しています。だからタイトルで釣る必要もないし、サムネイルを作りこむ必要もない。その点が、他の運営者との圧倒的な差別化になっています。
「お金の教育を広めたい」という強い志があるから、フォロワーや応援してくれる人が増えたのでしょうか?
それはあると思います。税理士をはじめ、専門知識の発信をしている人は「発信者」自体にファンがつきにくいんです。税金に関するYouTubeを運営していたときは、「僕」ではなく「僕の知識」を見にくる人が多いと感じました。
でも、お金の教育を広めて社会を変える!という方針に変えてからは、僕自身のファンになってくれる人や、「お金の教育に対する熱い想い」を持っている人が増えましたね。
発信をするなかで、心ない言葉をもらったときはどう考えていますか?
「僕の活動が広まって社会がよくなれば、攻撃してくる人も救える」と考えています。多分、攻撃するような人は余裕がないんですよね。
でもお金の教育を普及させれば、日本社会がよくなって国民の賃金が上がる。そうすれば金銭的、精神的に余裕のある人が増えて、攻撃してきた人も幸せになるはずです。
他のお金の発信者と違って、大河内先生は社会や未来に目を向けていますよね。「子どもたちに教育をする」という視点があるのは、他の人と違う部分ではないでしょうか。
僕がやっていることは、未来のインセンティブでもあります。30年後に僕が70歳になったら、今0歳の子どもは30歳です。彼らがお金について学んだうえで、働いて税金を納めてくれたら、僕も含めて日本社会全体にインセンティブがあるはずです。そういう意味では、単なる慈善活動ではないんですよね。
ある意味リターンを求めている、ということですね。
もちろんです。今の子どもたちが現役世代になったら、僕はもうおじいちゃんですから。「君たちが大人になったときに、少しでも社会をよくして渡せる状態にするから、あとはよろしく!」という想いで活動しています。
社会全体をを変える!学校での「お金の授業」について
本の制作や拡販、YouTubeやVoicyの発信活動、学校での授業と、さまざまな活動をされていますが、特に力を入れているのはどれですか?
全部重要なのですが、今は教育現場の授業が一番重要だと思っています。
お金の教育は社会全体の話なので、置いてけぼりになる人を作りたくないんですよね。
例えば、僕が学校を作ってお金の教育をしたら、一部の人には知識が浸透すると思います。でもそれでは、学校で授業を受けた人だけが対象になってしまう。そうではなくて、社会全体を巻き込みたいと考えています。
学校に出向いてお金の授業をするなかで、特に印象に残った学びはありますか?
東日本、特に首都圏の学校からあまり依頼がないのは、非常に勉強になりました。僕なりに考えて辿り着いた結論は「首都圏の学校は、先生や生徒が忙しすぎる」ということです。授業をやるにしても、時間を作らないといけませんからね。
現状は、西日本の学校からの依頼が多いです。「大阪の人はお金の話が好き」とよく言われますが、それだけお金に対する興味があるのだと思います。
東日本の学校から依頼が少ないのは意外でした!では、今後は西日本でお金の教育をおこなって、徐々に東日本にも浸透させていく……という狙いでしょうか?
そうですね。「日本社会を変えるのなら、当然東京から」と思っていたのですが、そんなに甘くないとよくわかりました。
依頼を受けて学校で授業をするだけでは、社会は変わらない。「お金の教育体制が整備されました」という状態にする必要があります。
例えば「大阪の〇〇市が、学校にお金の教育を導入した」という事例があるといいですね。行政は他の自治体を真似るケースが多いので、ひとつでも事例ができれば、他の地域に広がっていくと思います。
お金の教育を普及させるためには、教育者を増やさないといけませんよね。
そうですね。ただ、必要に迫られれば数は増やせると思います。例えば、学校の先生たちは、子どもに対して話をするプロフェッショナルです。
僕よりも「子どもたちに教える」という点では、はるかにスキルが高いんですよね。だから、学校の先生たちにお金の知識を伝えれば、お金の授業も絶対にできると思います。
学校の先生なら「何かを子どもに教える」というハードルはクリアできていますよね。
そうですね。実際に、僕が運営しているコミュニティには、現役の学校の先生たちがいます。先生の経験がなくても「お金の授業をやりたい!」と言ってくれるメンバーもいます。
彼らが僕と一緒に教育の現場にきて、授業の仕方を考えてくれることもありますね。本当は僕が主体で進めたほうがいいのですが、いかんせん忙しくて……。コミュニティメンバーが自主的に動いてくれるので助かっています。
直近の目標は、お金の教育の導入に向けて自治体と連携することでしょうか?
そうですね。ただ、現状はまだまだ慈善活動です。お金の教育を本格導入するのなら、自治体に税金を使ってもらわないといけません。
税理士がしているお金の授業に、税金が使われるというのもおもしろいと思うので、そういったことが話題になってくれると嬉しいですね。
また、僕は税理士なので税金の使い方についてアドバイスすることもできます。お金の教育と税金の使い方、この2つを絡めて一緒に進めてくれるような自治体を、今まさに探しているところです。
人気の要因は圧倒的読者目線。「フリーランス税本」と「お金のお守り本」
「フリーランス税本」を出版してから、どんな変化がありましたか?
予想以上に僕の手の届かないところまで広がって、フリーランスの人はみんな読んでいる感覚があります。
先日テレビに出たときに、共演したタレントの方がダーッと走ってきて「本を読んでます!」と言ってくれました(笑)今は26万部ほど売れていて、どんどん手に取ってくれる人が増えていますね。
「フリーランス税本」がここまで伸びた要因はなんだと思いますか?
ひとつは時代の影響で、フリーランスの数が増えていること。もうひとつの要因は、税金に関する本のなかでも、一番わかりやすいことですね。圧倒的な読者目線なので、このわかりやすさを超える本が他に出なければ、今後も売れ続けるでしょう。
たしかに「フリーランス税本」はとてもわかりやすかったです!
専門家を追い詰める本なんですよね。他の本は「こういう税金制度があるよ」と専門家が言ったら、主人公が「そうなんだ」と納得して次のテーマに移ります。でも「フリーランス税本」は、それだけじゃ終わらない。
税金について教わっても、税金を好きになるわけじゃない。確定申告はむかつくし、面倒くさい。その様子を、主人公のあんじゅ先生が代弁してくれています。「そんな税金、払いたくありません!どうにかなりませんか!」と、漫画形式で僕が追い詰められ続ける内容になっています(笑)そんなリアルな様子を描いているのが、売れる要因だと思います。
もう一冊の「貯金すらまともにできていませんが、この先ずっとお金に困らない方法を教えてください!」(以下、お金のお守り本)も売れていますよね?
「お金のお守り本」は国民全員に届けたいのですが、現状売れているのは約12万部だけです。ただ、買ってくれなくても、店頭で立ち読みをしたり、図書館で借りたりしてもらうだけでも構いません。どんな形式でも、内容が伝われば僕は満足です。今まで数千冊は寄贈したので、手に取ったことのある人の数は相当多いと思います。
今後「こんな本を書きたい」といった想いはありますか?
「フリーランス税本」「お金のお守り本」この2冊で、言いたいメッセージは書き切りました。ただ「子どもたちにお金の話をしよう」「もっとお金の話をしていいんだよ」というテーマは書いていないので、次の本を出すとしたらそんな内容にしたいですね。
子どもたちに授業を通して伝えたいこと。お金の教育の未来
学校のお金の授業で、どんなことを子どもたちに伝えたいですか?
「明日以降、お金の話をすることに違和感がなければ100点」だと思っています。買ったものの値段でもいいし、ゲームのなかで使ったお金についてでも、テーマは何でもいいです。
お金の知識を内側にとどめることなく、みんなで役立つ知識を共有したり、悪いお金の使い方について注意喚起できたりしたら成功だと思うんですよね。
今の日本は「お金について語ることがタブー」という文化が広まっているので、お金の授業を通して、子どもたちのお金に対するアレルギーを拭いたいですね。
みんなでお金の話を共有しあってマネーリテラシーを上げていく……という未来が想像できました。
一番重要なのは「お金って生涯学ぶものなんだ」と理解することです。国語や算数は「学ぶもの」だと、日本人なら全員知っています。でもお金は毎日使うものなのに、学校では教えてくれない。お金の教育を義務教育に導入するためには、まずは「お金=学ぶもの」という意識づけが大事ですね。
私も大河内先生の発信から「お金って勉強するものなんだ」と気づかされたひとりです。
そうなんですよね。働いて稼いで、毎月の生活費を支払えばいいわけじゃない。お金について、もっと知らないといけないことがたくさんある、とひとりひとりが気づく必要があります。
iPhoneだってたくさん機能があるのに、LINEしか使えない人もいます。お金のことを学ばずに社会に出て生活費を払っている人は、iPhoneでLINEのアプリしか使っていないのと同じ状態です。
昔はそれでも死ぬまで走り抜けられる時代でした。でも今の時代はそうではない。だからお金の教育が大事なんですよね。
隣にいる人にお金の知識を伝えることが、社会を変える一歩
お金の教育を義務教育に導入するために、私たちにもできることが色々ありそうですね。
お金の教育を義務教育に導入することも重要なのですが、社会を変えるために今できるのは、周りの人にお金の重要性を伝えることです。
僕が届けられる声には限界があるので、この記事を読んでくれた方には「役立ったお金の知識」や「こんなお金の使い方をして失敗した」などの話を、大切な人にどんどんシェアしてほしいですね。僕はその活動を「マネーリテラシーの環を広げる」と呼んでいます。
ネットで大々的に発信する必要はなくて、配偶者や子ども、兄弟に話すだけで十分です。「隣にいる大切な人」に伝えるだけで、お金に強い人が少しずつ増えて社会全体が変わります。
「お金の教育を義務教育に導入する」は壮大な目標に思えますが、今できることを少しずつ積み重ねていくことが、ゴールに近づく一歩なんですね。
まさにそうです。お金の知識をたったひとりに伝えるだけでも、その行動は社会を後押しするので、自信をもって行動してほしいですね。
余裕があれば僕と一緒に活動したり、お金のことを発信したり、といったことにもチャレンジしてもらえたら嬉しいです。
「大河内先生と一緒に活動したい」と思った人は、何をすればいいでしょうか?
日々お金の話に関する議論をしていて、メンバーもみんな優しい人たちばかりです。最近はフリースクールの授業に同行してくれる方や、見学にきてくれる方を募っています。
もしくは、音声配信の「Voicy」のプレミアム放送でも、よりディープな活動内容を報告しています。
まずは隣にいる人に、お金の話をすることが社会を変える一歩ですね。お金の教育の活動に興味がある方は、大河内先生のコンテンツも活用されてみてはいかがでしょうか。大河内先生、本日は貴重なお話をしてくださりありがとうございました!
ありがとうございました!
インタビュアー・ライター:ゆらり
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