働きながら年金をもらうと受給額が減るって聞いたんだけど、本当なの?
本当だよ。在職老齢年金という制度で、ある程度稼いでいる人は年金が減らされちゃうんだ。
ずっと保険料払ってきたのにヒドい!
だよね。どんな制度か詳しく解説するね!
老後に支給される年金は、加齢によって働けなくなった人の生活を保障する目的で支給されるものです。
そのため、年金を受給する年齢になっても、ある程度給与をもらえている人は、在職老齢年金制度によって年金がカットされます。
年金をもらいながら働く予定のある方は、「いくら稼げば年金がカットされるのか」「どのくらい年金が減らされるのか」を知っておきましょう。
- 在職老齢年金の対象者
- 年金の減額を回避する方法
- 年金を受給してからの働き方
年金がすべてカットされるわけではないから、制度内容をきちんと理解しておこう!
在職老齢年金とは
在職老齢年金とは、厚生年金保険に加入しながら受け取る老齢厚生年金のことです。
在職老齢年金は、給与と年金を足した額が月48万円を超えると年金が一部または全額停止になります。
ただし、支給停止となるのは老齢厚生年金のみで、老齢基礎年金は停止されません。そのため、在職老齢年金が全額停止になったとしても、老齢基礎年金は全額支給されます。
年金については以下の記事で詳しく解説しているよ!
在職老齢年金の対象者
在職老齢年金の対象者は、年金がもらえる年齢で厚生年金保険の加入条件を満たしている人です。そのため、厚生年金保険に加入していない人は対象外となります。
厚生年金保険の加入条件は、1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以上であることが条件です。
また、所定労働時間が正社員の4分の3未満であっても、従業員が101人以上の会社に勤めていれば、週の所定労働時間が20時間以上、かつ月額8.8万円以上で加入対象となります。
毎年10月に年金額が見直される
厚生年金保険は、加入条件を満たしていれば70歳まで保険料を支払います。
そのため、65歳以上で在職老齢年金の適用を受けている人は、支払った保険料に応じて毎年10月(12月受取分)から年金額が見直されます。
ただし、年金額が増えた結果、給与とあわせて月48万円を超えると年金が一部停止になる可能性があるので注意しましょう。
2022年4月から毎年見直されるようになったよ!
在職老齢年金の計算例
在職老齢年金は「総報酬月額 + 基本月額」のうち48万円を超えた金額の2分の1がカットされます。それぞれの用語の意味は、以下のとおりです。
総報酬月額:月々の給与 + ボーナス ÷12ヶ月で計算した額
基本月額 :年金(老齢厚生年金)の月額
実際の計算例を見ていきましょう。
このケースでは、年金を全額受給することができます。しかし、以下のような収入が多いケースでは受給額が減ってしまいます。
このように老齢厚生年金14万円のうち8万円が停止となります。
65歳で年金を受給するって考えると、年齢の割にけっこう稼いでいないと年金は停止にならないんだね!
そうだね!だから在職中に年金がカットされる人はそんなに多くないんだ。
年金の減額を回避する方法
年金を受給しながら働く人のなかには「がんばって働いているのに、年金が減額されるのはイヤだ」と思う方もいるでしょう。
そのような人のために働きながらでも年金が減額されない方法を紹介します。
年金の受給年齢を繰り下げる
年金の受給年齢を繰り下げると、最大70歳まで在職老齢年金が適用されないため、年金額が減る心配が基本的にありません。
また、繰り下げ受給には、将来の受け取る年金額を増やす効果があり、年金受給を1ヶ月遅らせるごとに0.7%増額し、最大42%まで増やせます。
ただし、年金を繰り下げた場合は、在職老齢年金で年金がカットされるはずだった分には増額率が適用されないので注意しましょう。
たとえば、70歳まで年金を繰り下げた場合は、65歳から受給したときカットされるはずだった部分には増額率が適用されなません。
年金の繰り下げによって在職老齢年金の減額は回避できますが、繰り下げた場合にカットされるので、しっかり比較したうえで選択しましょう。
増額されなかった分は、あとから増額されることはないの?
生涯増額されないよ。給与をいっぱいもらっている人は注意してね。
個人事業主として働く
在職老齢年金が適用されるのは、厚生年金保険に加入できる会社員のみです。そのため、厚生年金保険に加入しない個人事業主は在職老齢年金の対象となりません。
ただし、個人事業主で働いた場合は健康保険ではなく、国民健康保険に加入することになります。国民健康保険の保険料は、地域や前年の収入に応じて決まるため、厚生年金保険よりも保険料が高くなる可能性があるので注意しましょう。
また、個人事業主になると厚生年金保険に加入できないため、年金額が増えません。在職老齢年金の減額を避ける目的で個人事業主として働くと損する可能性もあるため、よく検討してから判断しましょう。
個人事業主(フリーランス)の社会保険については以下の記事で詳しく解説しているよ!
年金を受給してからの働き方
高年齢者雇用安定法では、会社に対して70歳までの雇用を努力義務化しており、年金を受給しながら働く人が年々増えています。
年金を受給する年齢(原則65歳)になってからの主な働き方には、以下の3つがあります。
- 現在の働いている会社で再雇用される
- 転職する
- 業務委託契約で働く
現在働いている会社で再雇用される
会社によっては、65歳以降も現在働いている会社で「再雇用」されて働くことができます。
ただし、60歳の定年時に希望すれば65歳まで働けますが、65歳以降は条件が設けられている場合があるので注意が必要です。
たとえば、人事評価基準がB以上としている場合や、身体能力に問題がないことを条件としているなどです。
そのため、65歳以降は必ず雇用が継続されるとは限りません。65歳以降に継続して働きたい方は、65歳以降に再雇用制度があるか就業規則などで確認しておきましょう。
転職する
65歳以上でもスキルが高く、健康な方は転職できる可能性があります。
求人は多くありませんが、現在務めている会社が65歳以降働けない場合は、転職するのも一つの方法です。
リクナビNEXTでは、65歳以降の再雇用制度を導入している会社の求人を多数掲載しています。年金受給後も働きたい方は、65歳を迎える前に登録しておきましょう。
業務委託契約で働く
会社が「創業支援等措置」という制度を導入していれば、65歳から70歳までの社員を業務委託契約で雇用することが法律で認められています。
業務委託で働けるかは会社によって異なるため、就業規則や人事担当者に確認しましょう。
業務委託契約で雇用の継続が認められている場合は、65歳以降に個人事業主になるため、在職老齢年金の制限がなくなります。
まとめ:在職中に年金をカットされる人は多くはない
在職老齢年金は、年金を受給しながら一定の給与を得ている場合に、年金がカットされる制度です。
在職老齢年金では、給与と年金を合わせて月48万円以上稼いでいる原則65歳以上の人が対象となるため、対象者は多くはありません。
老後資金に不安がある方は、年金の減額を避けて働かないよりも、元気で働けるよう働いて稼いでおくのがおすすめです。
- 在職老齢年金は月48万円を超えたら年金がカットされる
- 年金が停止されるのは老齢厚生年金だけ
- 年金の減額を避ける目的で個人事業主になると損する可能性がある
これからも「日本人がお金に強くなることが日本を強くする」と信じて、ブログやYouTube・Voicy、学校の授業をがんばります。
それでは今日も素敵な一日を。
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